追い出し行為は違法!裁判判決と家賃保証会社について


元不動賃貸営業マンの私が最近、非常に気になったニュースのひとつを紹介します。

みなさんは「追い出し行為」という言葉をきいたことはありますか?

「夜逃げ屋」は映画で聞いたことがあると思うのですが、「追い出し行為」は近年、注目されてきた言葉です。

私が不動産賃貸で勤務を始めてスグに賃貸物件の違法な追い出し行為が話題となり、その後裁判でも違法とされていたにも関わらず追い出し行為が行われ2016年4月に裁判で判決が出ました。

家賃保証会社による追い出し行為にたいしての裁判の判決

神奈川県海老名市に住む男性が2015年3月と4月、2ヵ月分の合計8万円の家賃を滞納したそうです。その後、家賃保証会社が4月13日に家財撤去を通告し、10日後に玄関に別のカギを付けて入室しできなくしたうえで家電や衣類を処分したそうです。そのため男性は9日間公園などで過ごすことになったそうです。

男性は330万円の損害賠償を求め提訴し裁判の判決は家賃保証会社に対して処分された家財の損害を30万円、ホームレス状態を強いられた慰謝料として20万円、合計55万円を家賃保証会社に支払うよう命じる判決となりました。

家賃保証会社は「男性側が電話連絡を怠った」と反論したそうですが判決では不法行為と認定されました。

そして裁判長は家賃保証会社の対応を「窃盗や器物損壊罪に処せられるべき行為だ」指摘したそうです。

大家ではなく家賃保証会社が訴えられた

過去の追い出し行為の訴訟では、部屋を貸した大家側と借りた入居者側が争っていましたが、今回は連帯保証人の代わりとなった家賃保証会社と入居者が争ったケースです。

そのため、恐らくではありますが大家さんには滞納となった分の家賃は家賃保証会社から支払われていると思われます。まぁそのための家賃保証会社なのでが・・・。

また追い出しの手口は昔と変わらず部屋に入れなくするようなカギを付けたそうですが、これを付けては大家さんも入れなくなるような…。

あくまでも部屋は大家さんの持ち物であって、その部屋を貸しているだけなので大家さんが入れなくなるような事をしてはダメです。

こういったことを考えると大家さんと家賃保証会社でなんらかの話し合いをして家賃保証会社が行った行為なのでは?と考えてしまいます。

家賃滞納をした場合はすぐに退去しなければいけないの?

さて、この判決をみてみなさんはどう思ったでしょうか?

家賃保証会社の対応が当然と考えるか、裁判の結果を当然と考えるか。恐らく二つに分かれると思います。

たしかに家賃滞納はよくありませんが裁判の結果通り、これは完全に家賃保証会社に非があります。

これは不動産業界で働いた事がある方であればわかる当たり前の結果ですし、家賃滞納が起きる事は残念ながら日常茶飯事です。そのため大家さんも家賃滞納を避けるために入居者を選び、今では連帯保証人は家賃保証会社を利用してくださいという物件も多くなってきているのです。

そもそも部屋を借りるという契約は信頼関係によって成り立っている契約であり、法律ではその信頼関係が破たんしていると認められなければ契約は解除できないのです。

さて今回の家賃滞納は2ヵ月分とのことですが、その時点で信頼関係は崩れていると思われるかたが多いかもしれません。

しかし、裁判所の判例では少なくとも3ヵ月分以上の家賃滞納がなければ契約解除は出来ないと考えられていますが、信頼関係の破たんが認められれば1ヵ月の家賃滞納でも契約解除が認められます。

ただ信頼関係の破たんを認めた判例は少なく借主有利なのが家賃滞納に関する裁判の現状です。

そのため大家さんは家賃滞納があっても入居者にすぐに出ていってもらう事ができないので、大家さんは非常にリスクが高いのです。

家賃保証会社は許可も免許も必要なく誰でもできる

さて今回、家賃保証会社が追い出し行為を行ってしまいましたが実はこの家賃保証会社というのは2016年4月現在、免許も登録も必要ありません。

簡単にいえば誰でもできるということです。

例えばお金を借りる時に消費者金融などを使いますが、お金を貸す会社は貸金業法で登録が義務付けられており無登録で行った場合は処罰の対象となります。

しかし家賃保証会社は何も必要ありません。一度、家賃保証会社に関連する法案が国会で審議されましたが、現状は法律として制定されていません。

法律がないという事は新規参入しやすく家賃保証を行う会社が、ここ数年で非常に増えました。しかし倒産する会社も実は非常に多かったのです。

家賃保証会社はリスクが高く儲からないので追い出しを行う!?

家賃保証会社が新しくできたとしても、その多くが倒産がしてしまう理由は簡単です。家賃滞納や夜逃げが非常に多くて採算が取れないのです。

私が営業マン時代に誕生したある家賃保証会社も当初は比較的安い保証料で家賃保証を行っていましたが、ある日から保証料が2倍に上がりました。その理由を家賃保証会社の担当者に聞くと、先ほどの理由と同じで家賃滞納と夜逃げが多すぎて採算が取れないとのことでした。

そして家賃を払えない人から家賃保証会社が、お金を回収することは非常に難しく、だからといって追い出しという違法行為は普通の企業は行いません…。

しかし免許や登録が必要なく、また家賃が払えないという入居者の弱みにつけこみ、違法な追い出し行為を行う家賃保証会社も存在します。

そして今回裁判を起こされた家賃保証会社も、入居者の弱みにつけこみお金がないから裁判なんて起こされないと考えて追い出し行為を行ったのではないでしょうか。

家賃保証会社にたいする早急な法整備が必要

私は家賃保証会社の業務を行うには免許又は登録制が必要だと考えています。

国会でも、賃貸の家賃保証会社にたいする法律が成立しそうでしたが残念ながら法案は廃案となってしまいました。

しかし今後、法律として制定する可能性は高く早く法案が成立することを期待しています。


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